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 弦楽合奏の為のエチュード第1番

弦楽合奏の為のエチュード第1番『シベリア』
Etude for String Orchestra No.1 "Siberia"
2013年公開作品 作品番号1

※動作環境:videoタグ対応ブラウザ(IE11,Android 4.1動作確認済み)


【この曲の目的について】


 この曲は、学生や比較的経験の少ない社会人により結成された弦楽アンサンブル、もしくは管弦楽サークルの弦合奏練習曲として、過度な負荷を感じることなく、合奏の楽しさを味わえることを目的として作曲しました。
 また、それぞれの楽器の持ち味を最大限に生かしつつ、難易度に関してはパート間で極力均一になるように配慮しました。普段セカンドバイオリンで演奏している方もファーストバイオリンに挑戦してみるのも良いでしょう。


【曲の構成とストーリーについて】


 以下のように3部+コーダで構成されており、ニ長調⇒ロ短調⇒ニ長調⇒ロ短調という順で、調号の変わらない平行調による転調を行っております。
 ニ長調、ロ短調とも、弦楽器には非常に相性の良い調性ですので、ピッチも合いやすいかと思います。
 またストーリーをもたせた標題音楽でありますので、非常に分かり易い音楽になったかと思います。
 なおストーリーに関しては、某TV局で放送していたロシアに住む日本人のリポートより、インスピレーションを得ました。


T-Pastrare(田園風景):ニ長調(0'01"〜)


 シベリアの美しく、そして厳しい広大な大地を、一人の老人が旅をしていました。目指している場所は一寒村のハラグン村。


U-Tempestoso(嵐のように):ロ短調(0'50"〜)


 老人は、ハラグン村に到着し、シベリア抑留の悲劇の舞台であった強制収容所に足を踏み入れました。そう、老人はシベリア抑留を経験し、生還した旧日本兵でした。過酷極まりない労働、命を落としていった友
・・・様々な辛い過去が蘇り、老人を苦しめます。


V-Pastrare:ニ長調(2'00"〜)


 しかし、現在はこの村もすっかりと静けさを取り戻し、日本人慰霊碑も村民の手で美しく管理されています。老人はふと我に返り、自分がなぜ今生きていて、 なぜ辛い思い出のあるこの地に戻ってきたのか、 その答えをようやく見出しました。


W(Coda) -March Funebre(葬送行進曲):ロ短調(2'58"〜)


 そして老人はアコーディオンを手に取り、命を落としていった旧友達にレクイエムを捧げます。


【編成について】


 3-3-2-2-2型編成以上が良いかと思います。
 指揮者がいたほうが勿論良いですが、指揮者なしで44小節目のritを合わすのが困難な場合は、Pastrareのテンポを1小節前倒しして構いません。


◆ パート別 演奏の手引き ◆


第1バイオリン


 音域は一番高いところで第7ポジションを要します。チューナーによる音拾い練習は必要ありませんので、メロディの中で心地よいピッチを探っていきましょう。
 難所攻略としては、50小節目の最後のAを第3ポジションに移動しておけば、51小節目の最後のGの音を4の指で取れます。このことで結果的に上昇音型の音程が合いやすくなります。
 葬送行進曲はA線上でポジション移動をします。


第2バイオリン


 対旋律やメロディのユニゾンがあるパートです。全て第1ポジションで弾ける音域に設定しています。また、Codaで第1バイオリンが抜けた後の旋律はとても重要です。美しく弾くことが大事です。
 難所攻略として、63小節目の最後のDは解放弦を推奨します。それ以降のDは4の指で押さえます。
 また、スラーの中で短い音は、解放でも構わないですが、crescの中の長い音はしっかりと押さえて、できればビブラートをかけて歌いたいです。


ビオラ


 ビオラも全て第1ポジションで演奏可能です。運指に関しても、非常に素直に弾けると思います。また、Tempestosoは音が露出される部分がありますので、一音一音丁寧な譜読みが必要になります。
 難所攻略法としては、Tempestosoでビオラが露出される部分や、葬送行進曲のcantabileの前まではデタッシェ奏法になります。ビオラは発音が鈍くなりがちですので、発音は明確になるよう意識すると良いです。


チェロ


 チェロは非常に音域の広い楽器ですので、この曲でも音域が高くなるフレーズに関して、しっかりとしたフィンガリング研究が課題になります。最大の魅せ場は、やはり最後の葬送行進曲です。
 難所攻略法としては、55小節目の2つ目のAは解放でとり、最後の#Fを第4ポジションの3の指で押さえるのがやはり初心者には一番素直なフィンガリングだと思います。


コントラバス


 Tempestosoのテンポは一見速そうですが、コントラバスでもしっかりと発音できるように調節していますので、ごまかさずに弾くことはできると思います。葬送行進曲のシンコペーションも重要です。
 難所攻略法としては、72〜73小節目のメロディは解放弦は避けて、ビブラート奏法を使うと良いです。他は全てノンビブラートで、解放弦も使われることをお勧めします。