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 弦楽合奏の為のエチュード第3番

弦楽合奏の為のエチュード第3番『役小角』
Etude for String Orchestra No.3 "En no Ozunu"
2013年公開作品 作品番号3

※動作環境:videoタグ対応ブラウザ(IE11,Android 4.1動作確認済み)


【この曲の目的について】


 この曲は、学生や比較的経験の少ない社会人により結成された弦楽アンサンブル、もしくは管弦楽サークルの弦合奏練習曲として、過度な負荷を感じることなく、合奏の楽しさを味わえることを目的として作曲しました。
 また、それぞれの楽器の持ち味を最大限に生かしつつ、難易度に関してはパート間で極力均一になるように配慮しました。 ただし、今回はバイオリン・ソロを置く都合上、第1バイオリンの表は難易度が高くなります。そこで、裏の担当は、終盤の高音部に関してユニゾンでオクターブ下げることで難易度の問題はクリアしました。 普段は第2バイオリンで演奏している方も第1バイオリン(裏)に挑戦してみるのも良いでしょう。
 さらに第3番目の練習曲として、随所に重音が登場させました。調性をヘ長調またはニ短調にし、出来るだけ解放弦を用いられるように工夫をしております。これを機会に、今まで重音をdiv.で演奏されていた方も重音にチャレンジして頂けたらと思います。


↑作曲者自身の指揮による初演(2014年2月)の様子


【曲の構成とストーリーについて】


 この曲は3部構成となっております。前2曲とは趣を変え、和風のロマンを感じさせる曲風に仕上げております。


TAllegretto(吉野の里)ニ短調 3/4拍子(0'01"〜)


 吉野の里山の原風景を描いています。
 テンポはワルツのテンポですので、短調であっても決して暗いわけではなく、桜の咲く華やかな一面も描いております。
 反面、古の都のノスタルジックな一面が垣間見え、全体的に素朴な田園のイメージで仕上げています。
 本シリーズでは初めてバイオリンソロが登場します。超絶的な技巧は要しませんので、ある程度楽器に自信がついた方は是非チャレンジしてみて下さい。


UAllegro(修羅の道)ニ短調 4/4拍子(1'28"〜)


 この曲のサブタイトルでもある『役小角』が、厳しい修行を積み、修験道を開拓しました。
 ここでもソロバイオリンが登場しますが、役小角の修行により法力を得たシーンとなります。
 のちに、第1バイオリンと第2バイオリンのtuttiで、弟子を従えた役小角が皆で厳しい修行を行うシーンとして再現されます。荒い音楽というよりは、緊張感のある音楽です。


VAndante(悠久の時を超えて)ヘ長調 2/2拍子(3'02"〜)


 吉野の里29小節からの主題が再現される部分です。ただし、拍子が3/4から2/2に変わっていることもあり、少し気づきにくいかも知れません。
 修験道の精神的な世界が、今も受け継がれており、それが世界遺産となって全世界の人々の関心を寄せています。役小角は、時代を超え、国を超えてもなお、皆の心の中に生き続けているのです。


【編成について】


 指揮者がいなくても演奏は可能ですが、上部にある初演写真のように、3-3-2-2-2型編成以上で指揮者がいたほうが無難です。


◆ パート別 演奏の手引き ◆


第1バイオリン


 最終部の表パートは非常に高音になりますので、不安な方は裏のパートを担当すると良いでしょう。
 難所攻略としては、61〜62小節目は、第5ポジションで弾けます。101小節目の重音は、手前の解放弦の時間を利用すれば第7ポジションで飛び込み、上のFを3に持ち替えると第6ポジションでDの音まで弾けます。そこからは慣れた第3ポジションに移れば良いです。


第2バイオリン


 今作も全て第1ポジションで弾くことができます。
 第2バイオリンにも重音が登場しますが、解放弦を使って楽に弾けるものです。試してみてください。 今回は第1バイオリンとのユニゾンが少なく、独自の動きが非常に多いので、やりがいが感じられると幸いです。
 難所攻略としては、128小節目は8分音符8つ分スラーがかかっていますが、4つ分に小分けして練習しても良いでしょう。


ビオラ


 ビオラ独自の動きが多く、中間部にソリ、最終部に対旋律も用意されているので、弾いていてとても心地良い曲になっているかと思います。流れるように弾いて頂ければ幸いです。
 難所攻略としては、中間部のソリが最も難しい部分になるかと思います。ただし、重音と言えども高度な要求ではないので、運指さえ頭に入れてしまえば弾けると思います。124小節目の終わり6音は、第3ポジションを利用します。この機会にぜひ練習してみて下さい。


チェロ


 前作と同様、クライマックスはバイオリンとユニゾンで旋律を高らかと歌い上げます。旋律を歌うときは、いかに滑らかにポジション移動ができるかが重要になると思います。
 考察の難しい場所は、パート譜に指番号を付けていますが、第2・3ポジションが安定しない初心者の方は、解放弦を多用して頂いて構わないです。
 難所攻略としては、124小節目は第2ポジションで入り、最後の♭BでD線上の第3ポジションに移ります。


コントラバス


 ♭Bが多く出てくるため、ハーフポジションを多用する曲となっています。音域は全く高くありません。テンポを揺らさずリズムを支配することが重要です。
 難所攻略としては、98小節目の4拍目のfzは、役小角が「えいっ!」と法力で岩を砕き、道を開く場面です。コントラバスはどんなに荒い音でも構いません。この音がトリガーとなり次の荒修行の展開につながります。
 127小節目は全体の支配が4ビートから8ビートへ変えるトリガーなので、より明確に弾きましょう。